名古屋鉄道本社やグループ会社で、生成AIへの注目度が増しており、多くの社員から「ChatGPTを利用したい」という要望が上がってきました。
そこで2023年7月に、社内でChatGPTを利用できる環境として「exaBase」を導入しました。選定基準は2つで「セキュリティ」と「スピード感」です。
セキュリティ面では、ユーザーの入力情報が学習データとしても使用されない点や、ユーザ単位で利用状況がわかる点に安心感がありました。スピード感では、コストが比較的安価であり、導入の意思決定がしやすいものでした。
導入後、ChatGPTを利用したいと希望した人にアカウントを付与しました。本社だけでなくグループ会社も巻き込み、また職位としても現場・マネージャ層・役員層まで幅広く展開し、200名程度にアカウントを付与してスタートしました。
ChatGPTの利用促進のため、Googleスプレッドシート上で「利用実績シート」を作成しました。「誰が」「どのような目的で」「どれだけの効果を上げたのか」がリアルタイムでわかり、会社全体でのChatGPT活用状況を可視化することができました。また優秀な活用方法の表彰や、ビジネスチャット上での情報共有なども行いました。
導入は順調に進んだものの、一方で「社内でChatGPTに詳しい人がおらず、素人だけで使っているのでは」という課題感がありました。
私自身もChatGPTを利用して数ヶ月で担当にアサインされましたがそこまで詳しい状況でもなく、生成AIやプロンプトエンジニアリングの知見をもつ人間は社内にはなかなかいません。また、他企業での事例や、最新のニュース・トレンドなども積極的に学びたいというニーズもありました。
そこで、上記のような活用促進と並行して、本社・グループ会社の中でもChatGPT活用の核になりえるメンバーを20名程度選抜したグループ研修を企画しました。
今回の研修は非常に有意義であったと思っています。参加した社員はChatGPTに関する知識・経験もバラバラでしたが、研修を経てほとんどの社員がChatGPTの活用方法やテクニックを理解し、実際の業務で活用することができました。
参加者からのアンケート結果でも、全員が「今後の業務に役立つ(非常に役立つ)」と回答しており、事務局としてもホッとしました。
研修の成果として、参加者からあげられた内容は大きく5つとなります。
1.ChatGPTの基本的な知識・技術
2.業務プロ説におけるChatGPTの活用価値
3.他社の生成AI活用事例、横断的な連携
4.生成AI活用事例の最新情報
5.ビジネス成果の創出
上記の中でも特に2つの成果が大きいと思っています。
1つ目は「研修期間内でのビジネス成果の創出」です。研修期間2ヶ月間の中だけでも、実際の成果として、参加者の担当業務で30%削減できた事例など、様々な業務効率化の成功事例が生まれました。
2つ目は参加者全員の「ChatGPT活用スキルの向上」です。参加者のリテラシは研修スタート当初はまちまちでしたが、研修を通じ、
・ChatGPTがそもそもどんな業務で使えるか
・プロンプトの効果的な作成方法
・ChatGPTとの対話を通じた回答品質アップ
など、基本的な使い方から応用技術までをマスターすることができました。
■ChatGPT推進の現状はいかがでしょうか?
導入から数ヶ月の間に約500時間の業務時間削減という結果が出ています。月ベースで見ても、毎月200時間の工数削減も実現できており、取り組みに対して高いROI(費用対効果)が出ていると思っています。
さらに、ChatGPTの導入により、デジタルリテラシーのスキルアップにも寄与しています。以前はExcelマクロを使ったことがない社員が、ChatGPTを使って独力でマクロを設計した事例などが生まれています。生成AIをきっかけに、別のITツールの活用が進むという良い効果を感じています。
まずは「自社データを使った生成AI活用」を準備しています。今回の検証期間内に、多くの社員から「自社のデータを用いた、具体的な回答が得られるようにしてほしい」という要望が寄せられました。自社が保有するデータをChatGPTと組み合わせることで、より質の高い情報提供を実現することを考えています。
もう1つは、ChatGPTの利用者をさらに拡大することです。特に経営陣や管理職層がChatGPTを活用し、業務成果が出せる状態にしたいと思っています。